物に八つ当たりする悪癖
恥ずかしい話だが、私は子供の頃からよく物に当たり散らしていた。時には自傷行為に及ぶこともあった。大学に通っていたときなど一時はそういうことがなかったが、どうもここ3、4年ほどで再び悪化した。あまりにも愚かなので詳しくは書かないが、昨日もくだらないことで激高し、また高価なものを破壊した。年に一回は何かを破壊している気がする。
今はどうか知らないが母もそういう人で、気に入らないことがあればドアを必要以上にバタンと閉めることなど日常茶飯事だった。矛先が直接子どもに向けられることはさすがになかったと記憶しているが、気分によって露骨に態度は変わった。感情の制御が苦手な人だと思う。遺伝か環境かはわからないが確実に悪影響は受けている。
そのような人間が大成するはずがないと思いたくなるが、テニスの試合などを見ていると超一流の選手でも平気でラケットを破壊する場面を見るので案外そうでもないらしい。フェデラー然り、ジョコビッチ然り。意外にもナダルなどはそのあたりは冷静だが彼のような人のほうが少数派だと思う。他にも経営者、政治家先生、タレントetc…、世の中でもてはやされる人たちにいかに人間的に稚拙な輩が多いかを考えれば論を俟たないか。
もっとも、彼らは物を破壊したところでお金に困ることなど全くないだろうが私はそうではない。わざわざ自分で経済的損害を引き起こして確実に破綻に近づけることでも、激高している際はそのような判断が不可能になる。テニスといえば私も中学生の頃はラケットは4、5本は折ったものだがよく新しいものを買い与えてくれたものだと思う。良いのか悪いのかその点は母は寛大だった。
たいていの物は金銭さえあれば買い換えれば済むかもしれないが、そうでない物もあるし、矛先が自他問わず人や動物に向かえばなおさら取り返しのつかないことになる。当然実害があるかないかにかかわらずそのような行為を目撃されようものなら確実に人望は失われる。後からすれば全く無意味で有害な行為でしかないのに感情を制御できない。
昨年にある人が、私は本人には直接会ったことのない知人がかつて壁を殴って穴を開けたことがあると話したのを聞いた。確かにストレスが蓄積されていたのだろうが、正当化する理由にはならないし、悪印象しか受けない。40か50の人のことである。大人げないとしか思えない。それでも自分のこととなると別らしい。
大学に通っていたときなど一時はそういうことがなかったと書いたが、それは自分の人生が充実していた時だったからかもしれない。しかし言うまでもなくそういう時期ばかりではないのが人生で、苦しい時期において困難や面白くもないことに対して如何に対処するかを真剣に考え直さなければならない。
あとはしょうもないことで激高したと書いたが、そのしょうもないことは破壊的衝動の引き金ではあるかもしれないが、根本的な原因ではないように思う。政治家や経営者云々を書いていて、自分自身のフラストレーションに加えて世の中の様々な人や出来事に対する怒りが蓄積されているから刺激に対して過剰に反応してしまうのではないかと思い直した。とはいえ、そのような怒りそのものは不当とはいえない。そうである以上はやはりそれをどうコントロールするかを考えるべきなのだろう。