暴れん坊将軍VIに「上様と太刀交えるは武門の誉れ」という台詞はない

私は暴れん坊将軍が子供の頃より好きで、どれくらい好きかといいますと、大学の休み時間に図書館の前のベンチに座って当時の携帯電話のワンセグで民放の再放送を視聴したり、卒業後もわざわざケーブルテレビの時代劇専門チャンネルに加入したりしていたくらいです。

ただ、暴れん坊将軍だけを目当てで時代劇専門チャンネルを契約するのはもったいないと思い、現在はAmazonのプライムビデオで暴れん坊将軍だけ見られるように契約しています。これなら月額550円で済みます。しかも好きな時間に、1シリーズだけでなく、3シリーズ分ほど好きなだけ見ることができるのです。

ところで、ウィキペディアの暴れん坊将軍のページはやけに詳しく書かれていて、本当に好きな人が書いたことが伺えますが、そこに書かれているすべての情報が正しいとは限りません。

暴れん坊将軍は典型的な勧善懲悪のワンパターンの時代劇ですが、殺陣の直前に松平健扮する徳田新之助こと徳川吉宗が悪人のもとに乗り込んで悪事を糾弾した上で、たいていは「潔く腹を切れ!」などと迫り、それに対して悪人の黒幕が開き直りをするやり取りがどこか滑稽なのも魅力の一つだと思います。

ウィキペディアではその「悪人の反逆」の「その他のパターン」に、「『上様と太刀交えるは武門の誉れ』(VI第5話、薩摩藩関係者に一例。吉宗は「参れ」と受けた)」と書かれていて、その台詞が存在していることを前提にしている他のサイトも見つかりました。しかし、実際の台詞は微妙に違っていますし話数も異なっています。

なぜ気づいたのかといいますと、この話、数年前に祖母の家に行った際にテレビをつけたらたまたま民放の再放送でやっているのを見たことがあるからです。ウィキペディアに書かれているように薩摩藩士が悪役として登場したことも確かで強烈な印象に残っていました。ただし、この男は悪役といっても黒幕ではなくその協力者で、しかも「上様と~」は殺陣の途中で言った台詞だということははっきりと覚えていたため、たいていは黒幕が言う「上様がこのような所に来られるはずがない」などと同じようにして並べられているのには強い違和感を覚えました。ところで、この話には途中、追手から逃れるために善人たちが道脇に隠れるシーンがあるのですが、私の趣味に付き合わされた80代の祖母は「普通気づくんちゃうか」などと野暮なことを言っていました。

この話はもう一度見たいと思っていたものの録画していたわけでもなくなかなか機会がなかったのですが、今月からプライムビデオでVIを見られるようになっているため実際に確認してみました。

副題は「江戸城危うし 吉宗の寝所」、話数は確かにプライムビデオで5話でしたが、ウィキペディアの「暴れん坊将軍VI」のページでは第1話がスペシャルになっていて、こちらでは「江戸城危うし~」は第6話になっています。時代劇専門チャンネルはスペシャルは別枠扱いになっているため1話ずれているのでしょう。「暴れん坊将軍」のページとはちぐはぐになってしまっています。

肝心の台詞も微妙に違っていて、実際には「上様と太刀交えるは武門の誉れ」ではなく、「上様と刃交わすは○○の冥利にごわす」と言っているように聞こえました。○○の部分は何度も再生し直したものの(プライムビデオならではで本当に便利な世の中になったものです)どうしても聞き取れませんでしたが、検索してみたところ、放送時の映像が字幕付きで画像キャプチャしてTwitterに載せられているのが見つかり、「武士道冥利にごわす」と言っているらしいことがわかりました。Wikipediaの記述と意味はほとんど同じです。

ただし、上で述べたようにこの台詞は黒幕ではない悪役が殺陣の終盤に堂々と上様に切りかかってくる直前のものなので「悪役の言い訳」と書かれたり、殺陣が始まる前の黒幕による「もはやこれまで~」などと並べられると違和感を禁じ得ません。(ちなみに「江戸城危うし 吉宗の寝所」の黒幕、老中戸田山城守による殺陣の前の台詞は、「かようなところに上様が~」などに次いでわりと多いと思われる反逆パターンの「かくなる上はお手迎え致す」

実際に放送を視聴したわけではなくこの画像だけ見た人は、「上様と刃交わすは~」も殺陣の前の台詞だと勘違いするのではないでしょうか。この画像を載せている人も実際にこの回を見たことがあるわけではなく、この画像もその人自身がキャプチャしたものではなく転載なのかもしれません。この画像とツイッターアカウントのおかげで何と言っているのかは判明したとはいえ、一体誰がこの画像を最初に作ったのかは知りませんが、いずれにせよこのような切り取り方、まとめ方は、まとめブログなどでよくあるように引用元での文脈や意図を無視してミスリーディングを与えるものです。暴れん坊将軍くらいなら社会的な害悪はないかもしれませんが、はっきりいってやり方自体はデマと同じといっていい。

さて、上記のセリフを言った後、上様が「参れ、薩摩示現流」と受け、悪役は「チェーストー!」(実際の示現流の掛け声とは異なるらしい)と叫んで切りかかるも、刀を躱された後にいつもの峰打ちを浴びせられてあっけなく一撃で倒れました。剣術に詳しいわけではありませんが、薩摩示現流は刀を弾き飛ばすほどの一撃必殺の剣術だといいますから最初の太刀を躱すのは多分正しい対処法なのでしょう。示現流の使い手は以前のシリーズにも出てきましたがその際は刀で受けて逆に弾いてしまっていました。これは間違いということになります。

ちなみにこの薩摩藩士(薩摩藩江戸留守居役梶原主水)、西郷隆盛の肖像画(実際は本人のものでははないですが)に影響されたのか眉が太くて恰幅がよく、「おいどんは~でごわす」などと実際の鹿児島人はまず使わないような鹿児島弁を話す、鹿児島をよく知らない人が考えたであろう典型的なステレオタイプのキャラクターなのがさらに笑えるので、興味がある方は知ったかぶりに満足などせずに、私のように是非一度と言わず何度も実際に見て欲しいです。

(2020年6月11日追記)誤変換や、意味の通りにくい箇所を修正。現時点ではまだプライムビデオの時代劇専門チャンネルで暴れん坊将軍VIを全話視聴できるので、このセリフが出てくる回を見てみたい人は今がチャンスです。(今までからするとおそらく来月には視聴できるシリーズがスライドしてVIは見られなくなりそう)今視聴できるシリーズはI、II、VI、VII、VIIIの全話に加え、時代劇専門チャンネルの数え方でIXの13話までなので、来月は来月で有名なIXの「江戸壊滅の危機 すい星激突の恐怖」を見られるようになると思います。他にもインチキロシア人商人が出てくるVIIの「愛妻騎馬奉行」あたりも一見の価値があります。


江戸城危うし 吉宗の寝所

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