自転車旅のアピール看板
自転車の装備についてさまざまなブログで情報収集をすることがあり、自転車で長旅をしている人の中には「日本一周」などと書かれた看板を、キャリアの上の荷物に括り付けている人がいるのですが、一体なんのためにそんなものを掲げているのでしょうか。
こういうことを書くとまた不要な敵を作りそうですが、単に目立ちたいからや、旅をしていると書いておけば見た人が同情して助けを差し伸べてくれるかもしれないからでしょうか。あるいは一時世間を騒がせた指名手配犯のように不審者でないと世間に思わせる効果もあるかもしれません。これは皮肉ではなく、差別や偏見の強い海外では自分の身を守るのに役立つことはありえるでしょう。
ですが少なくとも、単なる虚栄心を満たすためや、自分に利益が入ってくることをあてにした宣伝文句については、まだ若い大学生とかならばともかく、いい年になってそんな露骨な対外アピールをするのは物乞いのようで浅ましいことだと私は思っているので自分が20代の最後におよそ一ヶ月の旅をした際には、自分がどういう旅をしているか見せびらかすようなことは一切しませんでした。
旅をしている時、服は汗で染みていて体臭も漂っているでしょうし、顔つきも連日の疲れで険しくなっています。よほどの美男子なら別かもしれませんが、そもそもいい年の男が自転車に大荷物を積んで走っている姿など怪しげなものです。少なくとも私は爽やかさなどとは無縁だったと思います。見る人が何かを感じるなら、安っぽい同情を誘うような宣伝文句でなく、そういう生々しい姿から感じ取って頂きたいと思っていました。
それでも実際にはそんな私にも、道中様々な人が助けてくれました。信号待ちをしていたら車の窓を開けて突然千円札を渡してくれた婦人、温泉で知り合って一夜をともにした(変な意味ではありません)大学生、コインランドリーの待ち時間にそば屋さんでごちそうしてくれたクリーニング業の男性、以前も書いたとおりやはりコインランドリーの待ち時間に山盛りの料理を持ってきてくれた寮母さん、道の駅で缶コーヒーをくれた老夫婦、嫌がることなく軒下で雨宿りさせてくれた不動産屋さん等、みんな名も知らぬ人たちですが、今でも恩義は忘れていません。