斎藤整『世界史B一問一答完全網羅版』の間違い(青学と関学がカルヴァン派!?)
学研プラスから出版されている斎藤整『世界史B一問一答完全網羅版』という高校生向けの受験参考書には問題の下に著者による豆知識のようなコメントが書かれているのですが、読んでいて目を疑うような記述を見つけました。
「ちなみに、日本のキリスト教系大学は、イギリス国教会が立教大、一般的なカルヴァン派には青山学院大、明治学院大、関西学院大などがある」(第4刷、p.222、強調は引用者)そうです。
確かに明治学院はカルヴァン派の流れですが(他には東北学院もそう)、正しくは青山学院と関西学院はカルヴァン派ではなく「メソジスト」という教派です。
「青山学院の歴史は、米国のメソジスト監督教会が日本に派遣した宣教師によって創設された3つの学校、1874年にドーラ・E・スクーンメーカー女史によって麻布に開校された「女子小学校」、1878年にジュリアス・ソーパー博士によって築地に開校された「耕教学舎」、そして1879年にロバート・S・マクレイ博士によって横浜に開校された「美會神学校」をその源流とします。」
「関西学院はランバスの独創的で熱い志と祈りによって生まれましたが、決して彼個人の企てによるものではありません。多くの献金によって支えられながら、南メソヂスト監督教会の教育的ミッションの意図を果たすべく創立されたものであったのです。」
著者の斎藤整氏は学研プライムゼミの講師で、その前は駿台や東進の講師を歴任してきた人物らしいですが、少し調べれば間違いだとわかるようなことをなぜあやふやな知識でわざわざ受験参考書に書くのか首を傾げました。
余談ですがどうもこの本に限らず、書籍やネット上のキリスト教関連の記述はいい加減なものが目立ち、キリスト教について謙虚に学んだこともないしそんな意欲もないくせに自分には客観的にもっともなことが言えると思い上がっている人が多いからではないかと感じています(たぶん実際はキリスト教に限らず仏教などの他の宗教にもいえるのでしょうが)。以前Twitterを見ていたら、キリスト教系のカルト団体に関わってしまった人が、青学がキリスト教系の学校だということすら知らなかったなどと書いていて、そりゃあ伝統的なキリスト教会と異端的なカルトの見分けもつかないだろうと呆然としたことを思い出しました。案外青学の学生の中にも知らない人がいそう、というのはさすがに馬鹿にし過ぎでしょうか。
さて問題の下のコメントには、オカルト雑誌の「ムー」を発行している学研の本らしいといえばらしいかもしれませんが、まともな学者は誰も相手にしていないであろう、天皇の祖先がシュメール人であるという説があるなどと書かれていたり(p.16)、他にもいかがわしい記述が散見され、まだ学問に触れたことのない高校生は真に受けて惑わされる危険があり、斎藤氏の良識が疑われました。先に指摘した事実の間違いは論外として、高校生向けの受験参考書にそのような非(反)科学的な珍説をわざわざ書くべきでありません。そのようなことが書かれていると他の箇所の記述の正確さや信憑性も疑いの目で見ざるを得なくなります。受験生諸氏はくれぐれも注意したほうがよろしいと思います。