オンライン「署名」サイトChange.orgとそれを取り上げるメディアへの批判

時折ニュース記事を見て頭を抱えたくなるのだが、取り上げている事柄は別としても、マスメディアはもちろん、国や自治体などの行政もいい加減にChange.orgのような「ネット署名」をまともに取り上げるのはやめたほうが良い。理由は単純な話で、メールアドレスさえあれば誰でも匿名で投票でき、一人につき投票が一票のみであるのを確認する手段がなく、いくらでも票を水増しできて「署名」としての信頼性がないからである。たとえ数万票の署名が集まったとしても、それが本当に数万人の一人一票によるものであるかの確証はまったくない。

そうであるにもかかわらず、朝日新聞(林るみ氏)は「彼女たちが育てたChange.org 急成長のわけは」などという特集記事まで書いていたことがわかった。記事の中で日本版の立ち上げメンバーの現アジア・ディレクターのハリス鈴木絵美氏は「無料でキャンペーンを立ち上げられ、名前とメールアドレスさえ登録すれば、誰でもワンクリックで署名できる気楽さが受け入れられていると思います。」などと能天気に書いているが、まさにそれこそがChange.orgが「署名」として致命的である所以なのは常識的に考えれば明らかなことなのに一体何を言っているのだろうか。ハリス鈴木氏はイェール大を卒業した人だそうで、そんな欠陥がわからないわけがない。人を馬鹿にしているとしか思えない。

ところで数年前に私の母校で、ちょうど先日亡くなった稲盛和夫氏の名前がついた建物の駐車場建設のために大きな樹木が何本も伐採される計画に反対するための署名活動が有志の教員を中心に行われたが、その際はChange.orgのようなサイトが使われることはなかった。さすがに学者としての良心が許さなかったと思いたい。遠方の私はWordファイルに実名と現住所を記入して教員に送信するように求められた。面倒でも少なくともその程度の情報は記入させるのが常識だろう。その後、マスメディアにも取り上げられたこともあってか計画はなんとか縮小された(良くも悪くもマスコミの効果は大きいのだろうか)。

さらにChange.orgは、左翼的な人たちが単に自分たちの数を多く見せかけて社会への圧力をかけるために利用されている場合が目立つ。実際に、鈴木氏が取り上げている例は、「女性蔑視発言をした森喜朗氏への抗議の署名」、「職場のハイヒールやパンプスの強制をなくしたいという「#KuToo」」、「都議への女性蔑視発言への抗議」と、いかにもいつもTwitterで脊髄反射的に息巻いているような一部の人たちが飛びつくようなものばかりである。鈴木氏の経歴などについて調べるとやはりそのような主張に親和性のある人であるという情報がいくらでも出てきた。そもそもが署名サイトとして公正中立に機能しているのかどうかさえ疑われるとまでいうのは言い過ぎだとは思うが。

はっきりいってChange.orgで集まった数万票をまともに取り上げるのは、何年も前の東京都知事選の前にヤフーのアンケートで田母神俊雄氏が首位になった結果を真に受けるのと同じようなものである。一昨年にも愛知県で知事に対するリコールの署名活動が行われ、少なからずの極右的な著名人が支援していたが、大半が偽造であることが明るみに出た。時間さえかければ匿名でいくらでも票の水増しが仕放題のChange.orgを何の臆面もなく利用し、「署名活動」を称賛するような人に愛知県の事件を批判する資格はない。以前も書いたように、手続きがどうであれ数が大きいと見せられて自分たちの目的が達成されればそれで良いと考えているのなら卑劣極まりない。本当に不思議で仕方がないのだが、彼女ら彼らに良心の呵責はないのだろうか。歪んだ正義感を持った無責任な煽動家という点では右も左も同類である。

こんな根本的な欠陥を抱えたサイトを取り上げるマスメディアは本当に救いがたいほど程度が低いし、世論でもなんでもないこんなサイトの活動の結果によって国や自治体の政策が左右されれば、社会が一部の極端な煽動家の専横によって一般市民の生活が破綻さえしかねない。絶対に関わってはいけないサイトである。おぞましい。

(追記)MeToo運動との親和性。というより鈴木氏が挙げた例にはMeToo運動そのもののものもあるが。「私も」?ええ、そんなこと言われてもそれがどうしました?

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