未来予知は信用に値しない
2012年のこと「現在は戦前と極めて似ているというのが学者の間でのコンセンサスだ」と哲学研究者が大学の授業で言っていた。どういう文脈かは失念した。特定秘密保護法や集団的自衛権が問題になる前のはずだが民主党が敗北して第二次安倍内閣に政権が移行してからだろうか。あれから10年経って、安倍晋三氏が国内で射殺されたりはしたが幸いなことに戦中にはなっていない※。軍靴の音が聞こえるような人は何年経ってもずっと耳に響いているままだろうが、なんにせよ彼の現状認識は誤っていたし、先見の明がなかったことは確かだろう。
大風呂敷を広げるタイプの先生だが、今思えばやはりそういう人は粗っぽさがどうしても出てくるのでいちいち言うことを真に受けないほうがよいということか。単に当時は若かったから軽はずみなことを言ったというのもあるかもしれないが、学者の間で共有されていたということは彼一人の見解ではないだろう。学者といってもといってもどういうグループを指していたのかもよくわからない。
彼の発言に限らずこのような危機を煽るような時代認識や未来予知は多数の本でなされているし、私は見ないのでわからないがたぶんワイドショーなどのテレビ番組でも学者などのコメンテーターが好き勝手なことを言っているのだろう。しかしそのような予知が正確に当たったという話も、予言を外した人が自らの非を求めて詰め腹を切った話は寡聞にして聞いたことがない。私の周りにそのようなものに惑わされる人はいないが、それでも飛びつく人が少なからずいるから、売れるからこの手の無責任な当てずっぽうがいつになっても粗製濫造されるのだろうし、中にはそれをわかった上で職業的に予言する人もいるのだろう。いかがわしい新製品を売りつけるのに熱心なセールスマンのようである。
※いくらなんでも私が教わった先生はそんなことは言わないと思うが、自分たちないし国民が行動したから未来を変えることができたなどと言い訳することは可能だろう。美味しい商売。